家を建てるには。
新居が完成して、もうすぐ3ヶ月近く。その新居での生活が始まって、もうすぐ2ヶ月近く。 振り返る余裕が少しずつ出てきたこの頃です。設計士さんに感謝を込めて、家を建てるということに ついて私の想いを綴らせていただきます。
家を建てることに、必要なこと。 3つ挙げるとしたら、
1. 決断
2. 資金
3. 忍耐力
1.決断
決断とは、何かに対して意思をはっきりさせることですが、家を建てるにはいくつかの決断が 必要だと感じます。
・賃貸住宅生活を辞めるという決断
・家をどこに建てるのかの決断
・誰と一緒に住むのかという決断
・どんな家を建てるのかという決断
・設計士を選ぶという決断
・お金をいくらだせるのかという決断
・具体的に家を建て始めてからの設備や備品の決断
・完成してから新居に移り住むことの決断
〜家を建てると決めれば、あとは新居に対する夢と希望の日々をどこか想像していた私でしたが、 現実はいくつかの迫られる決断に挫折しそうになることもありました。
いつかは、一戸建ての我家を持ちたいと言う思いは、誰にもあるはず。それは、賃貸住宅は便利な 反面、狭いと言う現実に家族が増えていく経過で感じることと思います。何より、賃貸住宅生活は、 支払う家賃がその場で消えていくことの空しさ。どうせ払うんだったら、自分の家代に払う方がと、 周囲から言われ続けた10年でした。
まずは、本当に賃貸住宅生活を辞めるという決断をすること。 次に家をどこに建てるのか。幸いにも我家は、主人の実家が保有する土地があり、その中から周囲の意見を聞きながら選択したことです。
結果的には、良い感じのお家に仕上げてもらいましたが、道路面と段差がある土地は、何かにつけて費用がかかることは避けられません。
その次は、家の規模にも関係してくる誰と一緒に住むかということ。
我家の場合は、家を建てることを決める前にいろいろな話し合いを重ね、私達家族だけで生活することを決めましたが、ご両親と同居されたりする場合は、どんな生活様式にするのかなど決断することが増えそうです。
ただ、私の経験からなので一意見として、家族意外と新たな同居を始めるとしたら、いろいろな事を 予測する必要があるでしょう。例えば、生活時間やそれぞれの具体的な内容、何を一緒にするのか、 全て別々かなど、そして何より世代の違う人達が同居するという心構えの決断。これは、本当に何より大切なことで、お互いがお互いの生活を尊重し合う気持ちが必要だと感じます。お互いが、主張しあうと、せっかくの新居生活も苦痛になってしまうかもしれません。
さて、家作りの前置きがクリアできたら、どんな家を建てたいのかということについて。
今では本や雑誌の情報量はもとより、モデルルームも充実しており、希望のイメージ作りが大事だと思います。例えば、自然素材を中心に木と漆喰の家にしたいとか、ヨーロッパ風のレンガ作りにしたいなどなど。理想であったとしても、夢に向かって進む方が、後に出てくる忍耐力に影響してくるようにも思いますので、イメージ作りをしっかりしておくことが大事です。
さて、ここまでは相手のことを気にせず、自分達だけで進めます。土地購入が無かったので、ここまで来ましたが、エニシ設計士のコーナーにもありますように、土地購入からスタートされる方は、先に設計士を決めて、その時点から相談できるようにしておくと断然良いと思います。何より、プロを侮ってはいけません。そして何より何より、自分達が素人であることを自覚すること。そうしないと、安いからの言葉に負けて、結果的には予算オーバーの原因になりかねません。
続いて、設計士を決める決断。設計士を選択する手段はいろいろあると思いますが、基本的に思うことは、施主の要望に傾聴してくれ、的確なアドバイスがあること。勿論、人とのつながりですので、意見の相違はあったとしても、信頼関係を築けること。印象で決める場合もあるでしょうし、何度か話をした上で決めることもあるでしょう。何より、この設計士に決めると言う決断。この決断には、ある意味、自分の家を託すという意味合いもありますので、決める決断と信頼する決断も必要です。 私共は、木と人出会い館の塩田館長のご紹介により、エニシ設計士御夫婦を紹介頂きました。はじめて、お邪魔させて頂いた時に、御夫婦の暖かな笑顔に迎えられたことが強く印象に残っています。
帰路の車中で、夫婦共々、この設計士にお願いしようと決断しました。
通常、設計士が決まって、図面が仕上がると、それから、施工する工務店を選ぶ事になりますが、 我家は建築に関して、大工指定をしましたので、通常の仕組みとは若干異なりました。 工務店選びも決断の一つと言えます。特に、大工指定することも決断の一つです。
家のイメージ作りと同様に、予算についても決断が必要です。手持ち資金や融資額によって代わってきますが、今の生活から月々のローン返済にいくら充てられるのか、融資額がどのくらいなのか。
私達も具体的な生活がこれから始まるのですが、ひとつ言えるとしたら、現状の生活とかけ離れた予測を立てると必ず苦労しそうです。生活とローン返済について、冷静に判断する決断も必要となります。
具体的に設計に入り、家の建築も始まると家を建て始めてからの設備や備品の決断も必要になってきます。
ここでは、最後まで気を抜かず、一つ一つの決断を最後まで慎重にすること。適当にしてしまうと、あぁ〜ちゃんとみておくんだったなぁ…何てことが出で来ることも予想されます。最後まで、決断には責任が必要です。
最後の決断は、完成してから新居に移り住むことの決断。
新居が完成し、引渡しを終えると、引越しが待っています。新居ができて嬉しさ100%なものの、数年でも住み慣れたアパートを引き払うのは、何だか寂しく。ご近所にできたお友達などにお別れすることなど、少し感傷的にもなります。
引越し日の決断、引越し業者の決断、荷物整理の決断、使い慣れてきたものも処分する決断。何だか すこし寂しい感じもありましたが、実際はその作業の大変さにのまれ、感傷的に浸っていられない現実があり、引越しを終え、新居の片付けをしたことです。 いくつもの決断が必要になり、こんなにいくつもの決断できるのだろうかとも思いますが、全ては新居のため。これができるんですよね。ただ、決断までに迷うことがあれば、大いに迷い悩み、納得した決断をすることをおすすめします。〜
2.資金
〜家の予算とあわせて、手持ち資金と照合し融資額を決定することと思いますが、必ず、予備的に 手持ち資金を残しておくこと。最終的に予算内で収まったとしても、百万単位での手持ち資金をおすすめします。先立つものはお金などという言葉もあるように、お金って本当に大事です。
家を建てるには、全て完成して支払いではなくて、途中途中で支払いが必要になります。融資を受ける場合も、必要な金額を必要な時に受けられるとも限らず、いろいろな形態がありますので、各種支払い時期と融資時期を事前に必ず確認することが重要かと思われます。〜
3.忍耐力
〜1.決断とあわせて、家を建てると決めてから完成するまでには、いろいろな人と色々な交渉が 必要となってきます。基本的に、妥協することなく納得して進むには、施主の要望と周囲の要望を 交渉することも必要となってきます。この交渉には、体力的にも精神的にも完成を目指して、忍耐力や持久力が必要となってきます。忍耐力とあわせて、健康で元気でいること。そして、新居に住む家族が力を合わせて、支えあうこと。これはある意味、家族の結束力と言えるかもしれません。
また、我家は設計士と大工のコラボレーションで生まれた家です。
大工さんは設計士との仕事は初めてで、自分が今まで取り扱ったことの無い材料や工法の指定もあり、いろいろと心配したのでしょう、最初出して来た見積りは、設計士が提示していた概算をはるかに超えたものでした。そこで、設計士に相談し助言を受け、主人が粘り強く交渉を重ねた上、最後に設計士も交え三者で話し会い、納得する金額までたどり着きました。通常、入札などで施工者を選ぶ場合は設計士が交渉に当たるのですが、指定した大工が親戚であった事から主人が交渉にあたったのです。 これはなかなか大変でした。主人は良く頑張ってくれたと思います。
金額は下がりましたが、工事は図面通り誠心誠意行われ、結果、赤字にもならなかったようで安心した事でした。ただアドバイスがなければ、いわゆる言い値で契約していたかもしれません。
決断、資金と合わせて 建築を何処に依頼するのか...これも決断とあわせて気の長い忍耐力が必要となります。〜
以上、一般論的な内容になりましたが、私共は、エニシ設計士御夫婦とはもう5年ほど前にお会いさせて頂きました。私共の都合で、正式に設計が始まったのは昨年でした。
私共がエニシ設計士御夫婦と共に家作りをした感想は、御夫婦が非常に穏やかで、施主を大事にしてくれるということです。私共の要望を穏やかに聞き入れてくださったので、私共も要望を言いやすかったように感じます。つまり、コミュニケーションが取りやすかったこと。
御夫婦でそれぞれ設計士の資格もあり、男性・女性の視点、父親・母親の視点など 様々な視点から的確なアドバイスを頂けた事に本当に感謝しています。 家作りには、夢と現実が必要です。実用的であり、どこか自分達だけでは考えつかないこと・・・その二面性をそれぞれからアドバイス頂けたように思います。
(小さな事かもしれませんが、我家の台所・シンク前の窓枠下にその幅にあわせ、奥行20cm程度のちょっと物置があります。完成を控え、最終打ち合わせの時だったか、さりげなく「ここにはちょっとした物置があったら絶対便利ですので、調整しておきますね。」のアドバイスに、それほど現実味が沸かなかったのですが、住み始めて・・・感じました。ここが、単なる窓枠のままだったら・・・何と使いずらかっただろうと。プロの目は、隅々にまで届いており、住みやすい家が完成できるんだなぁと改めて思ったことでした。)
エニシ建築設計事務所の歴史は、御夫婦の歴史でもあり、プロ二人の経験を大いに活用していくと 納得できる家作りにたどりつくことができるでしょう。
2007年12月
小野美紀